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「ふっふっふ。頑張ったんですよ!」
嬉しそうに胸を張るノエルに目を凝らす。意識を切り替え、集中するポイントをズラすと、今ある視界にうっすらと別の色が重なってくる。
魔力の流れ。濃い青をしたその道行きは、特におかしいところは見られな────
「いや……え? これ?」
「気がつきましたか?」
吹き飛ばされたワイバーンの方に、あわてて視線を向けると、それで正解とばかりにノエルは笑う。
やっぱりだ。見比べて見れば一目瞭然。今のノエルを流れる魔力は空白獣と変わらない。つまり、
「魔力を固めてこうして体を作ってるんです」
「魔力体ってやつよ。ほら、学園長が使ってるのは見たことあるんでしょ」
本当に、これが魔力で……?
「ちょ、ちょっとシロウさん。くすぐったいですよ……」
「え? あ!? 悪い!」
思わずノエルの頬へと伸ばしてた手を引っ込める。
そこにあったのはただの魔力で、たぶん長く保つものでもない。
気づいて、目を凝らせば分かる。こうしてる間にもノエルを形作る魔力は揺らぎを増して、少しずつ空へとほどけて消えていく。
オレが気づいたことをノエルも悟ったんだろう。困った風に苦笑を浮かべるその姿は、初めて会ったときに抱いた印象と同様に、どこか少し儚げで。
けど、戻した手には確かな熱が残ってた。
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