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ウソだ。
いや、水着姿自体は確かに見慣れてるけどさ。
本人の部屋、弱ってる表情。そんな要素が合わさると、思うところはもちろんある。
ただ、今は違う。それを言うべきところじゃない。
「そんなことより、ほら、サンドイッチ作ってきたんだ」
トレイを差し出す。
晩飯と言うより夜食くらいな気もするけど、腹に詰めれるなら同じだろう。
「いらないって言ってるでしょ」
「なんだよ、オレの手料理が食えないってのか」
「…………食べたいに決まってるじゃない」
目が逸らされる。上半身を起こしたシエナは、枕を抱き寄せ口元を隠す。
「けどノエルが一緒じゃなきゃ、ヤダ。こんな状況で、あたしだけそんな抜け駆けみたいなこと、できないわよ」
枕の上から覗くすがるような眼差し。意地を張る子供みたいな声も相まって、意識のすべてが吸い寄せられる。
ひかれるままに手を伸ばし──
「そうかい。そんなこと考えてるヒマがあるなら、ちゃんと飯食ってさっさと寝ろ」
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