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「それで、こんなところまで連れてきて、何のようですか?」
サッと頬を撫でていく風が、足元の長い雑草を揺らしてく。
そこに混じる水の匂いに感じるのは、迫り来る雨の気配。薄暗い曇天も、その予感に拍車をかけてくる。
ギルドの転移陣を抜けて案内されたのは、だだっ広い草原だった。
ホントに何もない。見渡す限り緑の絨毯が敷き詰められるばかりだ。
「シエナには会ったのか?」
「そんなことを訊くためだけに、わざわざこんな所まで来たんですか? だったら帰らせてもら──」
「会ったのか?」
「………………会ってませんよ」
「そうか」
「それがどうしたって言うんで──ッ!?」
切迫、急襲。
音すら置き去る静かな踏み込み。白衣を大きくはためかせ、目の前に迫る鋭い蹴撃。
間一髪。首をそらしてやり過ごす。
刹那。
白刃が煌めいた。
振り下ろされた長剣は、深々と地面に突き刺さる。
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