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考えるヒマはなかった。
慌てて後ろへ跳びすさり、
「殲滅するぞ! 『粗製濫造(デッドコピー)』!!」
緑の草原は、剣の野原に変わってた。
「いきなり何するんですか!!」
答えはない。引き抜かれた長剣が目の前に迫る。
くそッ、何だってんだ!
「【魔力障壁(ウォード)】!! 【身体強化(リーンフォース)】!!」
足元の剣を蹴り上げ、掴み取る。
響く剣戟。その隙間をぬうように、
「完治こそようやくだが、それ以前にも出歩く暇くらいはあったはずだな」
「ありましたよ! それがどうしたってんですか!!」
「そもそも、治療はギルドに通うだけでいいと言われたはずだ。なのに、君はギルドの部屋を借りることを選んだ」
「──ッ。その方が何かと都合がいいですからね」
「不在から目を逸らすには、か?」
「ッッッ!!!!!! 力を寄越せ! 『裸の王様(リトルクラウン)』!!」
力任せの全力攻撃。けど、イロさんは顔色ひとつ変えない。変えないままに受け流される。
行き先を失った一撃は、大地を揺らして叩き割り、同時に自身も砕けて消えた。
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