2923人が本棚に入れています
本棚に追加
別の一振りを掴み取る。
横薙ぎの一撃。力任せの稚拙な斬撃は、決して相手を捉えない。分かってる。分かってるけど!
「目を逸らして悪いってんですかッ!!」
舞い散る火花。手にかかる衝撃。
打ち合う剣が鍔迫り合う。捉えたんじゃなく受け止められた。押し合う力は拮抗し、寸分たりとも動かない。
踏み込む足も歩みを止めた。
「悪いなんて思ってないさ。受け止めるには時間がかかる。それは当然のことだ」
「へ? え、じゃあ、何で……」
「悪いと思っているのは、君だろう」
「──ッ!?」
息を呑む。鋭い視線に、身じろぎひとつ許されない。
「多くの人が見舞いに来てくれていたな。友人たちや、商店街の人たち。それから、シエナとノエルの両親もいらしていたそうだな」
「…………ええ。色々話してくれました。色々聞いていってくれました」
リゼも、カインも、双真も、商店街の人たちも、それから2人の両親でさえ。
「みんな最後には決まって、こう言うんです。お前はよくやった。精一杯頑張った、って」
そんなワケない。そんなワケあるはずないのに。
最初のコメントを投稿しよう!