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「オレは好き勝手に暴れてるだけだったんだ。ケガしようが何しようが、『裸の王様』任せで何とかなる。だから、がむしゃらに戦う。だから真っ先に突っ込んでいく。それでいいと思ってた。それがいいと思ってた。…………それを見てるヤツがどう思うかなんて考えてなかったんだ」
軋む長剣。高まっていく圧力に粗製品は悲鳴を上げる。それでも、踏み込む力はさらに増す。
「心配してくれてるのは分かってるつもりだった。けど、それはやっぱり“つもり”でしかなかったんだ! だから、あのときノエルがかばう可能性なんて、これっぽっちも思い至らなかったんだ!!」
ポツリ、ポツリ、と。雨粒が頬を打つ。ぶつかる視線を裂いていく。
空は限界を越えたらしい。雨垂れはすぐに大粒へと変わり、肩を、腕を、全身を打っていく。
障壁越しに濡れることはない。ないけど、一粒一粒が重い。
「オレがそんなだから! 何も考えずに調子にのったから! だから、ノエルは──!!」
逃げる手だってあったんだ。あの時、空間獣はもうボロボロだった。適当にやり過ごしても、勝手に消滅してたのは間違いない。
なんで迎え撃とうなんて思ったんだよ。なんでみんなを連れてすぐにあの場を離れなかったんだよ。
なんで、なんで。なんで! なんで!!
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