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気休め、慰め、何でもいい。気が休まらなきゃ、何も始まりはしないんだ。
「……ふふ。また他人頼り?」
「助け合いの精神だっての」
オレの言葉にシエナは薄く笑って立ち上がる。
揺れる浴衣がそれに続いた。
「ホント、あんたらしいわね。それに比べてらしくなかったわ、あたし。さっきイロさんにも言ったんだ。あたしたちがノエルを見つけるって。弱気になってる場合じゃなかったわ」
伸びひとつ。赤い浴衣がその肩から滑り落ちる。
「……ありがと、シロウ」
「お礼はノエルを見つけてからだっての」
「それもそうね」
笑いあう。そこには一人足りないけれど、だからこそ見つける意欲が湧いてくる。
「さて、と。じゃあオレはそろそろ戻るから、早く休めよ」
ベッドから立つ。部屋を出る。扉を閉める直前だった。
「あんたこそ、ちゃんと休みなさいよ。──あたしはあんたが来てくれて嬉しかった。たぶんノエルも同じはずだから。あんたは欠けちゃダメよ」
小さな声は背中越し。振り返らないし、振り返れない。
だから、オレは小さく頷いた
「────りょーかい」
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