【足りない日々】

14/25
前へ
/384ページ
次へ
 気休め、慰め、何でもいい。気が休まらなきゃ、何も始まりはしないんだ。 「……ふふ。また他人頼り?」 「助け合いの精神だっての」  オレの言葉にシエナは薄く笑って立ち上がる。  揺れる浴衣がそれに続いた。 「ホント、あんたらしいわね。それに比べてらしくなかったわ、あたし。さっきイロさんにも言ったんだ。あたしたちがノエルを見つけるって。弱気になってる場合じゃなかったわ」  伸びひとつ。赤い浴衣がその肩から滑り落ちる。 「……ありがと、シロウ」 「お礼はノエルを見つけてからだっての」 「それもそうね」  笑いあう。そこには一人足りないけれど、だからこそ見つける意欲が湧いてくる。 「さて、と。じゃあオレはそろそろ戻るから、早く休めよ」  ベッドから立つ。部屋を出る。扉を閉める直前だった。 「あんたこそ、ちゃんと休みなさいよ。──あたしはあんたが来てくれて嬉しかった。たぶんノエルも同じはずだから。あんたは欠けちゃダメよ」  小さな声は背中越し。振り返らないし、振り返れない。  だから、オレは小さく頷いた 「────りょーかい」
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2923人が本棚に入れています
本棚に追加