【青の残照】

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 高まる声は、けれどすぼまる。シエナは小さく身じろぎひとつ。膝を抱えて、顔をうずめる。 「だから、あの娘があんたにケンカをふっかけるのを見たときは、ちょっとだけ嬉しかったの。それと同じくらい、あの娘にワガママを言ってもらえるあんたが羨ましかったの」 「そういや、初めて会った時は包丁で切りかかられたんだったな」  ほんの2ヶ月ほど前のはずなのに、ずいぶん懐かしく感じるもんだ。  ずっと一緒にいたから。色んな意味で近くにいたから。そう感じるんだろう。  けど、今はもう誰もいない。  すぐ隣に座ってるはずのシエナでさえ、今はもう遠い。 「あんたと一緒にいて、あの娘はよく怒るようになった。よく笑うようになった。あたしのことだけじゃなくて、自分のことも考えてくれるようになった。──そう思ってたのに」  声が震える。肩が揺れる。丸くなる背中は小さくて、どこかに消えてしまいそうで。  引き寄せられるように手を伸ばし──  グッと、拳を握ってその手を止める。
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