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支えることは簡単だ。慰めることは難しくはない。
ただ手を伸ばせばいい。ただ抱きしめればいい。
思う存分2人で一緒に吐き出してしまえば、オレもシエナも楽にはなれる。
けど、それだけはしない。できない。やっちゃいけない。
この痛みを。ノエルがいたことの証明を。忘れたくは、ない。
「もっとたくさん笑いたかった。もっといっぱい話したかった。もっとずっと一緒にいたかった。もっとずっと一緒だと思ってた……」
「……オレも、さ。まだ時間があると思ってた。答えを出すのはまだ先でいいって、もう少しあのままでいたいって思ってた。そう思って逃げてたんだ」
答えを出してれば、何かが変わってたのか。そんなことは分からない。分からないけど、少なくとも返事くらいはできたはずなのに。
「なんて言っても、もう全部遅いんだよな……」
「遅くないって言ったらどうするよ、クロウ?」
声がした。オレたち以外、誰もいないはずの草原に忽然と。
気づけば雨が止んでいた。
いや、違う。降りしきる雨の音は続いてる。視界の先は、まだまだ雨粒の向こうに消えている。
雨が止んだワケじゃない。オレたちの周りに落ちる雨だけが、ピタリと動きを止めていた。
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