【青の残照】

14/28
前へ
/384ページ
次へ
 支えることは簡単だ。慰めることは難しくはない。  ただ手を伸ばせばいい。ただ抱きしめればいい。  思う存分2人で一緒に吐き出してしまえば、オレもシエナも楽にはなれる。  けど、それだけはしない。できない。やっちゃいけない。  この痛みを。ノエルがいたことの証明を。忘れたくは、ない。 「もっとたくさん笑いたかった。もっといっぱい話したかった。もっとずっと一緒にいたかった。もっとずっと一緒だと思ってた……」 「……オレも、さ。まだ時間があると思ってた。答えを出すのはまだ先でいいって、もう少しあのままでいたいって思ってた。そう思って逃げてたんだ」  答えを出してれば、何かが変わってたのか。そんなことは分からない。分からないけど、少なくとも返事くらいはできたはずなのに。 「なんて言っても、もう全部遅いんだよな……」 「遅くないって言ったらどうするよ、クロウ?」  声がした。オレたち以外、誰もいないはずの草原に忽然と。  気づけば雨が止んでいた。  いや、違う。降りしきる雨の音は続いてる。視界の先は、まだまだ雨粒の向こうに消えている。  雨が止んだワケじゃない。オレたちの周りに落ちる雨だけが、ピタリと動きを止めていた。
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2923人が本棚に入れています
本棚に追加