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腹に衝撃。後ろに流れる草原の景色。
蹴り飛ばされた。それが分かったのは、地面に踏みつけられ、青の剣を喉元に突きつけられてからだった。
「ヘタに動かない方がいいぞ」
「シロウっ!!」
「おっと。赤の嬢ちゃんも、クロウが大事なら動かないこった」
「くッ! …………分かったわ」
炎の翼が景色にとけて、赤のドレスは火の粉と散った。
「おい! シエ──ぐッ!?」
「動くな、って言っただろ?」
「やめて! もう何もしないから! だから──!!」
耳打つ声は震えてる。また失う恐怖が、燃え上がってたシエナの怒りを折っている。
何でそんな声出してんだよ! 何でそんな顔してんだよ! ──何でオレはまた何もできないんだよ!!
グッと拳を固く握る。
けど、喉元へ迫る剣先も即座に応じてさらに近づく。
「ひッ……」
小さく短く上がるのは、弱々しいシエナの悲鳴。
………………仕方ない、か。
拳がほどける。全身から力が抜ける。抗う意思は砕けて散った。
「安心しな。抵抗さえしなけりゃ、こっちもこれ以上やる気はねえよ。わざわざ心器まで解除してくれたんだからな。ま、そこまでしろとは言ってなかったんだが。こりゃ、相当大事に想われてるみたいで良かったな、クロウ」
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