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なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ!!
ノエルに会えるんだ! また一緒に歩けるんだ!
けど、でも、だけど!!
「──と、話はここまでだな。このままお前らを連れていければ手っ取り早かったんだが、そう上手くはいかねえか」
「え?」
「ウルス、もうちょいこっち寄っとけ」
「……はい」
頷くウルスが一歩近づく。
瞬間だった。
「【終わる世界(ジャッジメント・グラビレイ)】」
景色が歪む。黒の力場が光すらをもねじ曲げる。
「初っ端から黒の終章かよ。相も変わらずせっかちなこったな」
「はッ! アタシは今も昔も変わらねーよ。お前も、よくわからんとこで思い詰めるのは変わってねーみたいだけどな」
「管理人さんッ!?」
喜ぶような、驚くような、戸惑うような。清濁併せ持つシエナの叫び。
管理人さん。シエナがそんな風に呼ぶとしたら、たった1人しか思いつかない。
Sランクギルド員。黒の魔女。銀嶺館の管理人。大層な肩書きの数々を持ちながら、仕事のほぼ全てをイロさんに任せて、まったく顔を出さない館の主。
オレは、合ったことすら一度もない。
ないはずなのに、その声にはイヤというほど聞き覚えがあった。
それこそ毎日のように聞いてた声だった。
「母、さん……?」
「ひさしぶりだな、バカ息子」
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