【足りない日々】

16/25
前へ
/384ページ
次へ
 伸びすぎた前髪が両目を隠してるせいで、緊張感があるのかイマイチ分からない双真。  そこへ文句を言ってるのは、黒いジャージで闇に溶け込む双真とは対称的に、巫女装束が暗闇に目立つ少女だった。  切りそろえられた前髪の下から覗く目が、堅い印象を与えてくる。  前に双真が言ってた退魔士とかいう人かね。 「双真。こっちの用件は済んだから、助けに行ってくれても大丈夫だぞ」 『あんまり手伝えんで、ごめんな』 「いいっての。忙しいのに色々探してみてくれただけで十分だよ」  何か分かったら連絡する。そう言い残し、人狼へと姿を変えて駆けてく双真。  その背中を最後に、空中に浮かんでいた画面そのものがプツンと途切れた。 「……で、妖怪って何だったんだ?」 「いまさらですの!?」  いや、忙しいみたいだからスルーしたけどさ。双真は仲間に要請されて元の世界に戻ってるわけだろ。  つまり自分の世界の話。気になるっての。  驚くリゼだけじゃない。シエナは呆れた視線を寄越してくるし、クリスも苦笑いを向けてくる。  けど、答えがあったのはまた別の方向からだ。
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2923人が本棚に入れています
本棚に追加