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『空白獣のことですよ。ニホンでは妖怪と呼称しているんです。ほら、見た目はまったく同じなのに人っ子ひとりいない世界なんて、まさに初期の彩色空間でしょう』
「怪談話でよくあるアレか」
『ええ、アレです。彩色空間は世界の模造品として生まれ、成長と共に色の特徴が強く出てきます。生まれたばかりの彩色空間は不安定ですから、迷い込んでもすぐに出てこられるんです。だから、噂話になることも多いのでしょうね』
色々と教えてくれたのは、さっきとは別の画面に映ったカインだ。
朗々と説明してくれてた声は、けれど急に沈み込む。
『それで、申し訳ないのですが、こちらも有益な情報はありませんでした……』
「いや、双真もそうだけど、そんなに恐縮されても困るっての。それを言ったら探し詰めのオレたちだって何の成果もないんだからさ」
「忙しいあんたが何も見つけられなくても仕方ないわよ」
『そういって頂けるのはありがたいのですが……』
ホント、恐縮されても困る。
だって──
画面から漏れ聞こえるのは、ヒュンヒュンと何かが飛び交う音。
というか端的に現すなら、ビームを撃ち合う音に聞こえるんですが。
「えっと、後ろで物騒な音がしてるみたいですけれど、大丈夫ですの?」
『ああ、敵が人型決戦兵器を持ち出したみたいですね。まあ、問題ありませんよ』
あ、そんなのまであるんだ。そんでもって問題ないんだ。
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