【足りない日々】

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「派手な動きに覚えはないな」  そうか。いや、それほど期待してたわけじゃないけどさ。  落胆を隠しきれないオレたちを前に、学園長はケーキの残りを口に放り込み、満足そうに席を立つ。 「さて、それではワシはそろそろ行くかの。最後にひとつ質問じゃが、白の彩色空間を中心に探しておるのか?」  黙って首を横に振る。  そうしたいのは山々だけど、残念ながらオレたちには白の彩色空間だけに狙いを絞るすべがない。 「いちおう白に当たったときは注意するようにしてますよ」 「そうか。なら、ワシからひとつアドバイスじゃ」  立ち去る背中越しに、一本立てられた指が覗く。  揺れる動きに視線が集った。 「青にも気をつけておけ」  軽く投げられた短い助言。  それが最後だった。言葉の余韻が消える間すらない。  手を振る背中をそのままに、学園長の姿はかき消えたのだった。
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