【足りない日々】

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 こいつ、水の薄膜を張って炎を防いでやがる!  断末魔の演技までするのかよ!?  慌てて駆け出すけど、遅い。 「きゃあッ!?」  巨大な口から舌が伸び、シエナの体を絡め取る。  揺れる炎を妖しく照り返す舌の締め付けに、赤いツインテールが苦しげに跳ねた。 「くッ……んッ…………」  骨まで砕かんと巻き付く舌。障壁で何とか防いでるみたいだけど、それもギリギリだ。  抜け出そうと足が暴れ回るけど、舌を零れた粘膜が伝うだけ。その動きも徐々に弱くなっていく。  垂れ下がった両手から双銃が滑り落ちた。 「シエナを離しやがれ! 【魔弾(バレット)】!!」  直撃、爆発。  魔力の暴発をのせた拳が、化けガエルの舌を捉える。けど、 「な!? 受け流しやがった!?」  舌を覆う粘膜が打ち込んだ拳を寄せ付けない。  体勢を崩したオレは、足元から吹き出した水流に難なく空へ打ち上げられた。
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