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ーーーー あの別れから、2年が過ぎた。
一想い、一想いを編むように、私を包む時間もゆっくりと流れる。私の髪は、腰まで届いていた。
古都・鎌倉がピンク色の絨毯に染まる。2人で歩いた小町通りを目にしても、もう心の涙も枯れ果て、流れることもなくなっていた。
あの時と同じ春の雪が舞い降りる。
手のひらに落ちた薄いピンクの雪。
私はこの想いの箱の蓋を閉じることを決めたのだった。
「今日はいかがいたしますか?」
美容院の若いスタッフが尋ねる。
私は彼女と目を合わせながら、
「カットで。ショートにして下さい」
そう答えると、
「綺麗な髪なのにもったいない。でも、きっとショートもお似合いですよ」
彼女のそんな言葉は、もう遥か遠い意識の向こうで聞こえてくるようで、私は一人、想いを馳せる。
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