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だけど。
僕は食に興味がない。
調理専門学校に通っているっていうのに、だ。
正確に言うと、自分が生きるために食べること、に、興味がないんだけど。
美味しい食べものは、美味しいと思う。
けれど誰かと食べるならともかく、身体を維持するために、義務的に食物を摂取するのは、なんていうか…どうでもいい。
だから、僕はよく聞かれる。
「どうして、この学校に通っているの?」
と。
簡単なこと。
自分が食べるのは好きじゃなくても、人に食べさせるのは好きなんだ。
ただのインスタント食品に、ものすごく喜んでくれた人を知っている。
あの時の気分は悪くなかった。
あんな風に喜んでもらえるなら、将来的に、人に食べ物を提供する側に回ってみてもいいかな、と思ったんだ。
この学校に通っている人たちは、ほとんどが食に対して積極的で、僕は圧倒されることが多いけれど。
もうすぐ、卒業。
いろんなん資格を取る時期が始まる。
就職に備えて、みんな、ぴりぴりしてくるだろう。
そうなったときにまた、僕はついていけなくなるかもしれないけれど。
でも。
「ほら、椎くん、行くよ」
「椎に肉を食わせる会とか、どうよ?」
「僕じゃなくて、自分が食べたいんでしょう?」
「オレ今、サーモンな気分」
ついていけなくて離れても、この人たちのことは、きっと好ましく思ったままだと思う。
少しは、食に興味がもてるかもしれないと、思わせてくれた人たちだから。
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