始まりは乗用車

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空と言うと語弊がある。正確には空に浮いた階段の、巨大な踊り場と言った方がいいか。無限に続く階段は雲を突き抜け下へと続いている。 口をだらしなく開いていると、目の前の男が問うてきた。 「汝、汝よ、答えよ。そなたの信条とは如何なものか」 信条…?この男の言っている意味がわからない。汝、とは俺の事だろう。周りには人一人さえいないのだから。それどころか音もない。匂いも、暑さ寒ささえも。 一体なんなんだろうか。夢なのか。 いや、夢ではない。はっきりとわかる。俺は死んだんだ。 あれが夢だったらあの痛みは、耳をつんざく悲鳴は、肉の焦げた生臭い匂いは、説明がつかない。 だが、今のこの状況はどういうことか。 ああ、頭が痛い。 「汝よ!答えよ!」 男が詰め寄ってくる。……考えすぎたようだ。
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