31人が本棚に入れています
本棚に追加
空と言うと語弊がある。正確には空に浮いた階段の、巨大な踊り場と言った方がいいか。無限に続く階段は雲を突き抜け下へと続いている。
口をだらしなく開いていると、目の前の男が問うてきた。
「汝、汝よ、答えよ。そなたの信条とは如何なものか」
信条…?この男の言っている意味がわからない。汝、とは俺の事だろう。周りには人一人さえいないのだから。それどころか音もない。匂いも、暑さ寒ささえも。
一体なんなんだろうか。夢なのか。
いや、夢ではない。はっきりとわかる。俺は死んだんだ。
あれが夢だったらあの痛みは、耳をつんざく悲鳴は、肉の焦げた生臭い匂いは、説明がつかない。
だが、今のこの状況はどういうことか。
ああ、頭が痛い。
「汝よ!答えよ!」
男が詰め寄ってくる。……考えすぎたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!