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………俺は案外すごい存在になっていたようだ。
「そうかそうか。君はなにも知らなかったね。世界を、あちらをこちらを、そして私を」
そうだ今俺はなにも知らない。知っていることといえば記憶持ち、ということそれしかない。
「座りたまえ。話をしよう」
っ、いつの間に。
男が手で指す先には椅子があった。ここには先ほどまでこいつと俺しか存在しなかったはずだが…。
恐るおそる腰掛ける。その椅子は学校にある木製のものだった。いつもどうりの座り心地に思わず頬が緩む。
そう、俺は学生であった。今日向かっていたのもその場所、学校だった。
パチンッ!
男が指を鳴らした。すると、なにも持っていなかった手に突如として、紙が現れた。
まるで、ずっとそこにあったかのように。自然と。
「ふふっ、では話そうか。榎本章くん」
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