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その日の夜、僕は寮の一人っきりの部屋の中で窓から遥か遠くにある月を眺めながら、武器の手入れを済ました後、体の汗という汗をすべて洗い流すため、大浴場へと向かった。
今は午後10時。どうやら、武器の手入れであまりにも時間をとられたようだ。
その為今風呂場にいる人は10人もいない。
何百人もいたのに、とてつもなく広い浴場をこんなにも少人数で使うなんて・・・
寒気を感じてしまうほどだった。
「・・・?」
ところで、僕みたいな10代前半(?)の兵士志願者は今回の仮兵士の中で50人もいないらしい。
そうだよな。
普通に考えてみれば、このツリー・スクエアの名門学校に進学しているかもしれない。または親や仲間と一緒に畜産でもしているかもしれない。いや・・・
僕の脳内で、いろいろな考えが頭を駆け巡った。
とにかく、15歳前後で兵士になるには名門騎士家系の子供ぐらいしかいないよなあ。
僕は、変わっているんだろうか。
それとも・・・
僕は湯の中に顔の下半分まで沈めた。
その時、僕の前を通過していくちょうど僕と同年代の少年がいた。
僕はその姿勢を保ちつつ、その少年を目で追った。
顔こそ見えないものの、体型は僕と変わらない、普通の少年だった。
その少年は、僕に気付きもせず普通に浴場から出ていった。
とうとう僕一人になってしまった。
風呂場の中央にあざってある不思議な模様の時計に目をやると、11時ちょっと前だった。
よし、早く出よう。
大浴場から僕の部屋まで片道10分間。
僕はあの少年のことなど全く考えなかった。
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