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結局、初詣に行くことにした。
西川め、感謝しろよ。
それなのに、場が引いているのは。
そもそも、元旦の神社の境内で、こんなはなしを持ち出したほうが悪い、と、おもう。
「成り行きとゆうか…興味本位で」
と、言った自分の言葉にウソはない。
雅さんについて言外にはいろいろあるが、そんなことをマキちゃんと西川に教える必要はない。
聞きたくもないとおもうし。
うつむいたマキちゃんが、つけまつげをパチパチとさせている。
「そんな…」
潤んだ瞳をこちらに向けて、
「恋愛感情なくていいから、マキともしてよ!!」
と叫ぶ。
え?
「えええ?」
ぼくは言葉にならなかったが、西川は素直に驚いていた。
…どんまい、西川。
「ははは、おもしろい子だね、」
これは雅さん。
当事者の自覚なし。
「まあ、男は貞操観念なんてないようなもんだけど、女の子がそんなこと言うもんじゃないよ?」
おい、山内、その言い草はなんだ。
「かわいいんだから、自分のこと、大切にしなさい」
「…てーそー?」
マキちゃんは、貞操の意味がわからないようだったが、はたから見ていても、きゅん、とゆう効果音が聞こえてきた。
頭をぽんぽんとされながら、雅さんの諭すような眼差しで、「女の子」「かわいい」とか言われたら、乙女心はもっていかれるだろう。
なんか丸く収まりそうだ。
結果オーライ。
ありがとう、雅さん。
無神経さこそ、物事を円滑にすすめるコツなんですね。
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