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「風呂場でする魅力は…掃除のしやすさだな」
とは、ことがおわった後のひと言。
無神経。ムードなし。
そう、これが雅さん。
さっき、玄関でぼくはおあずけをくらった。
雅さんもその気だったのに、ふと現実が頭を過ったんだろう。
「風呂場いこう」と、言ったかとおもうと、さっさと先に行ってしまった。
風呂場でやることはやったんだけど。
こちらのペースとおもっていたのに、主導権をあっさりと持っていってしまう。
持っていかれた主導権は、なかなか取り戻せない。
ぼくはそんなことを考えながら、ベッドの上に身体を寝かせている雅さんの横っ腹の肉をつまんだ。
「腹筋とかしなよ」
「くまさんみたいだろ」
「…かわいくないです」
「かわいくなくていいんだ、親しみやすさを演出してるんだから」
「屁理屈」
上体を起こしながら雅さんがわらって、
「おれに言い負かされてるようじゃ、北村教授には勝てないな」
と言い、ベッドに腰掛けていたぼくの髪を触る。
「ぼくは教授と勝負しているわけじゃないよ」
「そうなんだ?幸、髪乾かしていい?」
「自分でできます」
「とか言って、乾かさずに寝るんだろ」
いいじゃないですか。
「寝癖つくから」
と、雅さんは言うなりドライヤーを取りに行ってしまった。
雅さんって、たまに、ぼくの世話をやこうとするよなあ。
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