災い転じて……(聡希)

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 『秋風高等学校』  今年、そこに入学したオレ、桐原聡希。  今日は、午後イチで、物理の授業がある。  しかし、その物理の授業が、実験室への教室移動だということを、すっかり忘れていたオレ。  昼休みに、学校内を散策しているうちに、迷子なってしまい、やっとクラスの教室に戻ったときに、状況悟った。  教室には、だれもいない。  初めての実験室での授業なので、オレはその場所を知らない。  加えて、オレは生来の方向音痴。  ほかのクラスは、授業がもう始まっている。  そこへ、いきなり乱入して、先生に実験室の場所を訊く勇気はない。  マズイ、完全に遅刻だ。入学早々、残念キャラのイメージが定着されてしまう。  教科書、ノート、筆記具を脇に抱え、記憶を頼りに廊下を走る。  ……が、やっばり実験室には辿り着けず、迷子になってしまう。 「クソっ! どこだよ、ここ」  もはや、自分がどこにいるのかも分からない。  そのとき、階段から何者かが降りてくる気配を感じた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!