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一番私が欲しいもの
カズくんは全部、私に与えてくれるのに
私は、何を返せるんだろう
私は、――この人に
何をもたらせるんだろう
もうこのまんまでいいじゃん、ってワガママと
そうじゃない、って倫理との間を何度も行き来したまま、
答えなんか見つからない
そんな私を引っ張って、カズくんは市川さんを置いたまま、タクシーを捕まえた
乗り込んだタクシー内
額に浮かんで流れた汗と、髪が濡れているカズくんをじっ、と改めて見る
私の、為に。
ここまで、来てくれたのか、って
そう思ったら不覚にも
嬉しくて、もう
――つづく
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