マトリョーシカ

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短編小説です。 『マトリョーシカ』を初見で読んだ時、この作品を、きっと、また読みたくなる。 そんな予感がありました。 冒頭、踊り場のシーンで、若き宝石職人・ミハイルが登場します。 主人公ソーニャの恋の相手かと思いきや、読み進めると、そんな暢気な話ではありません。 母に続いて父親が亡くなり、借金の為にソーニャが幼い妹と共に邸宅を追われる物語です。 父親は息を引き取る直前に、マトリョーシカをソーニャに、万華鏡を幼い妹に遺します。 他の家財は借金のカタに全て失います。 この成り行きの中で、金や欲にまみれた人間の醜悪が描かれます。 マトリョーシカに仕込まれた真実とは? 読者は、物語の最後になって、ようやく青年ミハイルが冒頭のシーンで登場した意味を知る事になります。 見事な構成力です。 映画を観ているような錯覚に陥るのは、言うまでもなく、作者様の筆力です。 私は、泣いてしまいました。 姉妹の悲しい境遇にではありません。 感動の涙です。 一体、これほどの作品に仕上げるのに、作者様は、どれほど真剣に向き合ったのだろう? 無駄な表現が一つもないのです。恐らく何度も手を入れたに違いない、そのひたむきな姿勢にです。 最後に記される【どんでん返し】が見事です。 そうして、どんな悲しい境遇に置かれようとも負けるな! 生き抜く強さを持てと言外に伝えています。 これこそ小説の力です。 先ずは一読してみて下さい。 「なるほど。小説とは、このような作品をいうのか」と納得される筈です。
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