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薄暗い城の、ある一室には、長い髪を舞わせた少女がいた。色白い肌、漆黒の髪、薄暗い部屋の中で、彼女の肌と紅い瞳だけが浮かんでいた。
「これより、我々は人間の元に赴くわ。和平を望んでいるようだけど、私達がそれを呑むと思ってるのかしら。」
見下すように、長い髪を一房掴み、遊ぶ彼女は、女王フリアエ。
エリクシール達を束ね、エリクシルの祝福を受ける彼女。姿は人間でいうと、12歳くらいの少女だが、見かけによらず、数百年も生きてきた王なのだ。
その彼女の前に無表情で立ち竦む青年、ルカ。
女王の寝室に入れる唯一の存在。
「ねえ、ルカ。人間達は私達エリクシールを吸血鬼と呼ぶのでしょ?」
「はい」
「それって凄く面白いことよね。血を吸うのでは無く、与えているのに。何の根拠で吸血鬼なんて呼ぶのかしらね」
「………」
「ましてや、血を与えられるのは高貴なエリクシールだけ。私が生きてきた数百年で血を与えたのは貴方一人なのに。」
エリクシールには、爵位がある。
王であるフリアエの下に大公ルカ。
そして七人の公爵が国の中枢。
ルカを省いて八人しか血を与えられない。爵位にはエリクシール特有の瞳の色が関係している。瞳の色が濃ければ濃いほど力も強く、美しい。
エリクシールという種族は美しい種族なのだ。
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