恋煙り 海原燃えて 紅珊瑚 (定形、乃至異形式)

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<季題> 珊瑚、併せて、(恋)煙り並びに(海原)燃え <季節> (北半球では9月)秋分後の満月夜半 恋: 「性」概念全般の象徴。かつ「生殖」概念の延長。粛然な生命現象の一環たる「生殖」とその下位概念たる「性(有性生殖)」が、性別・性差をも超越した実存として収斂かつ拡大していく象徴的概念。 続く「煙り」の主語(格助詞省略)だが、併せて複合名詞とする解釈も可能。中句「燃ゆ」と相互示唆。 煙り: けぶり。または、けむり。「ウナバラ」や「ベニ」の音に合わせれば前者、その他は後者。四段動詞連用形、または「恋」と併せた複合名詞。 燃焼による煤煙同様、咽返るほど立て込めた気体や液体(または液状の個体粒子群)が、一旦上方へ向けて噴出した後ゆるやかにたゆたいながら解放拡散していく様の直喩。中句「燃え」に呼応する。 海原: うなばら。一般的には空中で海面を見下ろす位置から遠く広がっていく海を指すが、ここでは海中から海面を見上げて望む広大深遠な「海の原」を指すものとする。 続く「燃え」の主語。「恋」同様格助詞は省略。 燃え: 「燃ゆ」の連用形。激しく現象する様、赤く煌々とする様、心の奮い昂る様等の直喩。草花の「萌ゆ」と掛詞を成す。 上句「煙り」に呼応。また「恋」並びに「紅」と相互に示唆し合う。 て: 接続助詞。完了の助動詞「つ」の連用形が助詞として独立したもの。 連続・並立・原因・仮定等を表すが、ここではこの語に続く述語動詞を敢えて明示していない。各自自由に想像せよ。
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