長雨に 軒下盗む 烏かな

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<季題> 長雨 <季節> 立秋以降秋雨前線消滅まで 長雨: 秋の長雨、即ち秋雨。 梅雨よりは些か弱く、また断続的に降るのが専らだが、台風が前線に乗った際に大嵐となることもしばしば。 に: 与格の格助詞。 「~によって」・「~に乗じて」等も含意。 軒下: 文字通り、庇の下。ここでは雨宿りの場。 同時に、「軒」の語が「家(の玄関口・周辺)」を含意し、更にまた「家」の語は家屋のみならず家族的共同体も指すことから、共同体の庇護の象徴と解釈し得る。 盗む: 「軒を貸して母屋を盗られる」の譬を参照。 ただしこの句では、軒は貸したものではなく庇の下のみとはいえ、既に盗まれてしまったもの。果たして、母屋を盗ませずに守り抜くことはできるか。また、盗まれた軒下を取り戻すことはできるか。 烏: 大柄なワタリガラス等ではなく、むしろ一般的なハシブト・ハシボソガラスを指すと解釈されたし。そして特にこの句では盗人の象徴、また単複不問とする。 一羽のみならば、母屋を守り抜くことも軒を取り戻すことも容易かろう。しかし、烏は群れて生きる鳥。たとえその悪戯な愛らしさ故に親しまれもする鳥であったとしても、二羽三羽ばかりに止まらず十羽二十羽となったとき、この勝負の行方や如何に。
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