UP & DOWN

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篠原も最初にAチームに上がったのは10歳の事だった。 しかし、調子が安定せずAとBの移動を繰り返す存在だった。 幼なじみで自分にサッカーを教えてくれた、柏原と一緒にAでプレーしたいし、それ以上にAで活躍する俺を夢見ている宮脇さんに観てほしい。 そして、スローインから始まる。 最終ラインまで下げ、今度は反対側にいる柏原にボールが渡った。 柏原は、冷静に中央の伊藤にボールを流す。 「ギアチェンジといこか」 伊藤はDMFだが、かなり自由なプレーが許されている。その理由はスタミナの豊富さとフィジカルにある。身長は既に165㎝あり、フィジカルも小学生の中では規格外のサイズである。 ドリブルを開始した伊藤はすぐさま伊藤をマークしていた島尾を、緩急で置き去りにした。 (朝田は左サイド寄りやな。湯浅のドリブルが効いたか?) 先制点を取ることが、カテナチオFCの必勝パターンだった。 伊藤は柏原へスルーパス。 柏原はそのまま相手のゴールラインめがけて、ドリブル突破。 それに釣られてLSBの山崎が出てきたところで山なりのクロスボールをあげた。 そのクロスボールは、長谷川の元へと飛んでいく。 「こんな早く決められてたまるか!」 篠原が長谷川をマーク。身長で勝る分、クリアに成功した。 成功したと思われたが、ボールの落下地点には、伊藤がいた。 まだ、小学生だからだろう、Bチームの選手はクロスが上がってからはボールウォッチャーになっていた。 「もろたで!」
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