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最終ラインと伊藤との間にスペースを作る。
たしかに、そのスペースに渡邉が入ってくる可能性もあった。
冷静に考えればそうするだろう。
しかし、監督から怒られた後。
結果を出そうとする反面、ミスをしたら終わりだ。
そう思って体が固くなるのが常。
そのスペースに入ってきたのは宮瀬。
フィジカルに定評がある宮瀬が前に行くよりも、速さの藤木をFwに置いて相手DFを撹乱させる。
それが朝田の作戦だった。
その宮瀬のポジションに怪しく思った松尾は藤原をマークしにいった。
「戻るんや！松尾！」
「へ？」
松尾は唖然とした。
戻ろうとしたが遅かった。
朝田がヒールで後ろにいた島尾にパスを出す。
島尾は松尾を越えるフライスルーパスを新道に送った。
左サイドは誰もいない。
誰にも邪魔されずにクロスをあげる。
滅多にないことだが、しっかり練習してる者なら正確なクロスをあげることができる。
クロスに合わせるのは、宮瀬と藤木。
ボールはファーサイドの宮瀬のところへ。
宮瀬の最高到達点には身長で下回る三沢は届くことができなかった。
あとは、ボールを叩きつけるだけだった。
もし教科書があるならば書いてあるであろう完璧なクロスとそれに合わせたヘッド。
ゴール左隅に飛んでいく。
しかし、ゴールマウスを守っているのは野久保。
ドイツ人の父を持つ野久保の長い手のリーチによって弾かれた。
そこにいち早く反応したのは伊藤。
こぼれ球の反応の速さはAの中でも群を抜く。
「やっぱとるのはお前だよな！」
朝田は伊藤がこぼれ球をとるのを分かっていた。
そのため、高木に頼んで伊藤を徹底マークしてもらっていた。
さすがの伊藤もワンタッチ目で高木と朝田に囲まれては、奪われてしまう。
ボールを奪った高木は朝田にボールを渡す。
伊藤はすかさず朝田にマークについたが、朝田はダイレクトで高木に返した。
「譲ってやったんだ！決めろよ」
「わかってるよ！」
左足を持ち上げ降り下げる。
ダイレクトシュートではあったが、高木は完全にボールの芯を捉えた。
強烈なシュートが繰り出された。
ゴール前には選手が密集している。
その状況はキーパーにとっては最悪の状況だった。
そのお陰もあったのか、野久保が気付いたときにはゴールの右上に綺麗に決まっていた。
ゴール！
スコアラー：高木
アシスト：朝田
2－1。
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