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Aの守備の固さにBは攻める糸口を見つけることができずにいた。
所謂、意味のないパス回しだ。
プロともなれば、意味のないパス回しと思われるもののなかにも少し変化を加える。
パスフェイクをしてみたり。
ドリブル突破を仕掛けるふりをしてみたり。
だがBのパス回しは拙いものだった。
そこに伊藤は目をつけた。
島尾が左の新道にパスを出したタイミングで伊藤が合図を出して、渡邉にプレッシングさせた。
新道もキープには自信があったが渡邊の鬼気迫るプレッシングにボールを奪われてしまった。
「ようやった!こっちに渡せ!」
「任せたぜ!」
「分かっとるわ!」
伊藤は久しぶりに前線に出た。
基本は勝ち越している時は自陣で相手を潰すプレーをする選手であった。
新道がいないことで手薄になった右サイドをドリブルで突破していった。
普通ならDMFがカバーに来るが、伊藤の作戦によりずるずるとパス回しをしていたため、戻るのが遅くなったのだった。
パス回しはしていたのではなく、
されていたのだった。
サイドから中央へと行く伊藤の前に篠原と交代して入った相模が来た。
「おれだって、Aに上がりたいんだ!」
伊藤は相模との1対1に応じるようにスピードを緩めた。
かと思いきや、強引に相模の右を突破しようとした。
(やべ!抜かれたらAに行けねえ!)
相模は反射で足をボールに向かって出し
た。
ピ、ピ、ピッ!!
ファウルを与えてしまった。
足はしっかりボールを狙ったつもりだった。
しかし、あろうことか伊藤の足を蹴ってしまった。
相模自身、そんなに強く蹴った覚えはない。だが、スパイクでの蹴りは強烈である。
現に伊藤は痛みに苦しんでいる。
「痛てー!足折れたで!」
「すいません!わざとじゃないんです!」
伊藤に怪我をさせてしまった。
伊藤の名声は有名でサッカー番組で取り上げられたこともある。
海外のクラブからトライアルへ参加の話もきている。
そんな選手を怪我させてしまったのだ。
『悲報!若手のホープ、紅白戦で怪我させられ選手生命絶望か!?』
『未来の日本代表、潰される』
そんな見出しが明日のスポーツ紙に載るだろう、、
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