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「それでなんの用?」
相変わらずマイペースな裕也に毒気を抜かれてた英里は深く深く溜め息を吐くと諦めたような顔をした。
「お父様とお母様が呼んでるからリビングへ行きなさい。いい?」
「分かりました」
部屋から出ていく英里を"感じとり"ながら裕也は丁寧なお辞儀をしながら苦い顔をした。
父と母からお話があるらしいが裕也にはその内容が分かっていたからだ。
気乗りしない体を無理やり動かしてリビングへと向かう。
一度深く深呼吸をして、リビングのドアを開けた。
「父上、母上。ただいま参りました」
「ああ、そこに座りなさい」
「失礼します」
父上──鈴科要一──に促されてから机を挟んで要一の対面にあるソファーに腰を下ろした。
「それで、何の御用ですか?」
顔を睨むとはいかないまでも不機嫌そうな顔で要一を見た。
否、見るよりも早く裕也は長袖Tシャツの袖に隠していた長い針を要一の顔へと投擲した。
突然の攻撃に驚きながらも首を捻り躱そうとするが、それよりも早く針が鼻の下──人中──に突き刺さった。
だが、
「いや~、いきなり父親に手を出すとは我が子もやんちゃなものだな」
顔に針が刺さったままの要一はニヤリと笑うとその場から消えた。
しかし裕也には焦りの顔はない。直ぐ様二本目を取り出すと背後へと手首のスナップだけで投じた。
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