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だがその針は要一に刺さることなく机に落ちた。 「チッ…、空間改変(テレポート)か」 「流石『第六感の支配者(シックスセンサー)』と称される程ではあるな」 「いいえ、『空間支配(スペースルーラー)』には敵いませんよ。所詮俺のやっていることは他人から常時放出されている魔力を読み取っているだけですから。それと『第六感の支配者』なんてたいそうな肩書きはいりません。俺はあくまで『平凡』なんですから」 彼は自身を無能と蔑んだ。日本七大魔法家の一つとして数えられている鈴科家。その中でも彼の魔法師としての戦闘能力は致命的な程に低かった。鈴科家の持ち味は多種多様な攻撃魔法を行使する所にあるのだが、裕也が使えるのは五種類。 自身の身体、主に地面との接触面に発動することによる──加速魔法『高速機動(アクセル)』 幻覚を生み出し、攻撃を躱す──幻影魔法『夏の陽炎(ヒートヘイズ)』 敵の急所や武器の弱点を見抜く──分析魔法『急所解剖(クリティカルアナライズ)』 自身が生じさせた振動を操る──振動魔法『振幅増長(アンプリチュードプラス)』 そして、裕也のみにしか使うことのできない固有技──察知魔法『第七感覚(セブンスセンス)』 そう、裕也は生まれながらにして、これしか 使えないのだ。 確かに一つ──『第七感覚(セブンスセンス)』──に関してはそうとも言えないが、他の鈴科は固有技を複数は保有している。 それがために彼は自身の事を『平凡』『出来損ない』と称しているのだ。
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