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そんな彼女の技術は、最初こそスキーブーツの履き方すら分からず、スキーを履いて立ち続けることもままならない状態だったが、その合宿が終わる頃にはすでに基本動作であるプルークボーゲンをマスターしていた。
驚異的なスピードで技術を吸収していく華純自身は、
『元がemptyだからガンガン入るのよ』
と、彼女なりに謙遜して言っているようだったが、真守はそれが悔しかった。
「ふー、So tired…、何人来るかしらねぇ、新歓合宿。」
「去年、12、3人だったよな。まぁ、それくらい来てくれれば問題ないだろ。」
「まあね。…あとは、書いてくれた名前と番号が、ちゃんとホンモノかどうか、ってとこかしらね。」
「…。」
真守は華純を見た。
やっぱり、見抜いてたか。
「ところでマモル、アンタなんで説明んとき、団戦の動画見せないの?」
「……!」
「アレ、感動するじゃん、カッコイイし見栄えするし、it's so cool!これぞ青春!って感じで言えば、笑いも取れるし良いと思うんだけど。」
団戦。
華純の言うそれは、
『団体戦自由演技』
という大会種目のことである。
青峰大学スキークラブ・ディアマントはデモスキークラブに位置するサークルであり、冬季オリンピックでよく見るような『大回転』『ダウンヒル』といったアルペン競技とは違い、基礎的な動作を披露して審査員(ジャッジ)がそれに点数をつけるという採点競技の頂点を目指すサークルだった。
机にあるタブレットは、真守の私物である。
もちろん、華純の言っている動画は、この中に入っている。
「ほら、見せてよ。」
タブレットを掠め取り、ファイルを開く。
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