六騎士の伝説

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画面には、お揃いのチームウェアに身を包んだ6人の男子選手が映っている。スタート地点にてスキー板をハの字に開いて静止しながら、出番を待つために縦に並んでいた。 やがて、ゴール地点からGOサインが出たからであろう。先頭の選手が、ゴール地点にあるビデオカメラに届くほどの大きな声で叫んでいるのが分かった。 『せえのっ!!!1、2、漕いで、漕いで、行くぞーーーー!!!』 6人が同時に、ハの字だった板を揃えて斜面を滑り出す。 人と人との間が、ほとんどない狭い間隔。完全に密着しているように見える。 『せえのっっ!!』 リーダーの掛け声で、先頭から一直線になっていた列の1、3、5番目の選手が右へ、2、4、6番目の選手が左へターンする。 そして、今度は各々が逆のターンをして、中央でぶつかるスレスレのところを交錯しながら滑降をしている。 ロングターンを2回交差させた後、1、2番目と5、6番目がターンのリズムを変え、ショートターンに入った。 瞬間、その4人で3、4番目を囲むスクエアが出来上がる。 3、4番目はスクエアの中にいて、それぞれ左右のターンを逆シンクロさせながら、交互にターンしている。 『重なりまーーーーす!!』 最後に、それぞれの位置で滑っていた6人が先頭の掛け声にてまた1列に戻っていき、ゴール地点で停まった。 カメラがパンして、この演技の得点が表示される電光掲示板に向けられる…。 「あ!ちょっと!!」 と、得点が出ようかというその時に、華純は真守にタブレットを奪われた。 「これを宣伝に使うわけにいかないだろ、もう、みんな卒業しちゃったのに。」 「だって、来年はマモルが出るんだからいいじゃん。」 「……いや、俺なんか…。」 真守は、正直憧れていた。 この動画は、先月、撮影されたものだ。 スキーは、デモスキーであれ、アルペン競技であれ、個人競技がほとんどである。 あるとしたら、スプリントのリレーか、オリンピックで有名な『日の丸飛行隊』の異名を取るジャンプ競技の団体戦くらいのものだ。 毎年3月に行われる 『全国学生対抗シルバーフォックス・デモスキー選手権大会』 そのラストを飾る男子団体戦自由演技。その6人に選ばれるには、スキーの腕はもちろんのこと、チームワーク、勤勉さ、協調性、精神力、情熱を兼ね備えていなければならない、という云われがサークルにはあった。
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