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しかし、今の自分には。
1番肝心だと思っているスキーの腕がない。
「俺なんか、…まだまだ。」
「Why not?今から諦めることないじゃーん。私も、今年は女子の団戦出場してみたいなぁ。だから、パラさんにも言われたけど、女のコ集めないとね!」
「女子の団体戦は4人だったよな?カスミは、今やぶっちぎりの実力者だもんなー。」
真守は、ぶっちぎり、という言葉に華純が謙遜すると思った。しかし。
「Thanks、マモル。アンタも早いとこ、カービングターンマスターしないとね!」
…ぐさっ…。
華純はウソをつかないことを知っている。
本心から言っているし悪気が全くないのも分かっている。
しかし、やはり傷つく。
1年前、真守はスキー経験者のハズだった。
それに対して華純はスキーはおろか、雪を見るのも生まれて初めてだった。
悔しいのは、そんな超初心者に技術的に追い抜かれてしまったことだった。
カービングターン、というのは、現在主流になっているスキー板の形状を生かし、板の側面=エッジを雪面に対して立てて滑る滑走方法である。
スキーを滑る上では、ターンするという動作が当然入ってくる。
ターン回転のとき、内向きにかかる重力を利用して滑るのである。
真守の父親世代がスキーを始めた時代には、この技術は存在しなかった。
なぜなら、カービングターンとは、その名の通り、カービングスキーを使用しなければ出来ないからだった。
華純はスキーにハマるやいなや、親にぽんぽんと新しいスキーを買ってもらったらしいが、真守の方はそうも行かなかった。
親に買ってもらってから、そんなに年月が経ってないというのもあるが、もはや大学生である自分は、そこに甘えてはいけないと思ったのだ。
アルバイトで貯めたお金で、今年の冬こそ自分の板を買おうと画策していたので、先シーズンはOBの使い古したカービングスキーをありがたく頂戴するしかなかったのだ。
「…ありがと、…頑張るわ。…んじゃ、ちょっと昼メシ行ってくる。」
「It's okay、Have fun!」
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