六騎士の伝説

7/14
前へ
/222ページ
次へ
しかし、今の自分には。 1番肝心だと思っているスキーの腕がない。 「俺なんか、…まだまだ。」 「Why not?今から諦めることないじゃーん。私も、今年は女子の団戦出場してみたいなぁ。だから、パラさんにも言われたけど、女のコ集めないとね!」 「女子の団体戦は4人だったよな?カスミは、今やぶっちぎりの実力者だもんなー。」 真守は、ぶっちぎり、という言葉に華純が謙遜すると思った。しかし。 「Thanks、マモル。アンタも早いとこ、カービングターンマスターしないとね!」 …ぐさっ…。 華純はウソをつかないことを知っている。 本心から言っているし悪気が全くないのも分かっている。 しかし、やはり傷つく。 1年前、真守はスキー経験者のハズだった。 それに対して華純はスキーはおろか、雪を見るのも生まれて初めてだった。 悔しいのは、そんな超初心者に技術的に追い抜かれてしまったことだった。 カービングターン、というのは、現在主流になっているスキー板の形状を生かし、板の側面=エッジを雪面に対して立てて滑る滑走方法である。 スキーを滑る上では、ターンするという動作が当然入ってくる。 ターン回転のとき、内向きにかかる重力を利用して滑るのである。 真守の父親世代がスキーを始めた時代には、この技術は存在しなかった。 なぜなら、カービングターンとは、その名の通り、カービングスキーを使用しなければ出来ないからだった。 華純はスキーにハマるやいなや、親にぽんぽんと新しいスキーを買ってもらったらしいが、真守の方はそうも行かなかった。 親に買ってもらってから、そんなに年月が経ってないというのもあるが、もはや大学生である自分は、そこに甘えてはいけないと思ったのだ。 アルバイトで貯めたお金で、今年の冬こそ自分の板を買おうと画策していたので、先シーズンはOBの使い古したカービングスキーをありがたく頂戴するしかなかったのだ。 「…ありがと、…頑張るわ。…んじゃ、ちょっと昼メシ行ってくる。」 「It's okay、Have fun!」
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加