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「わかんなくてい」
――今は。
そう、しわくちゃにした顔が久しぶりに緩んだのがわかった
――お前が来てくれて、良かった
パタンと扉を閉めた瞬間、胸の奥底から高ぶりが身体全体に広がって
背をつけた扉をつたってそのまま床に崩れ落ちた
誰にも必要とされてこなかった
だから、このまま一人でこの世界から消えてしまうのもいいと思ってた
怖いのに
なにも残せなかった、人生が
ガン、ガン!と、背中に衝撃が何度も響く
七瀬が力任せに扉を叩いているその振動は、――七瀬の感情全てが伝わってきて
不思議と俺の心を温めた
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