第1章

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俺の予感は、こっち方面だと大抵当たる。 ゴールドって、正直、2種類あると思わねえ? すっげえ運転がうまいか、ペーパーか。 「何でまた、わざわざ練習してまで運転すんだよ?」 「今度、海に行くことになっちゃって」 「はい?」 今度はまたしても聞きなれない単語が出てきた。 海だと? この上なくインドア派の癖に! 「人を乗せなきゃならないから、念のために練習しておこうと思って」 「ああ…そう」 珍しく機嫌がよさそうだから、詳しく突っ込むのはやめた。 何を思ったか自分から巣を出てきて、自分から何かをしようとしてるんだし、させておけばいいだろう。 …多分。 「じゃあ、夕飯までに一回乗っとく?」 気楽にキーを取り出して、そういった自分を、俺は呪う。 本人のやる気に水を差すつもりはさらさらないけど。 だけど。 人を乗せるって言ってたし、何かあってからでは遅いわけだし。 そこでこっそり手を打ったところで、感謝されこそすれ、誰に後ろ指さされる必要はないと思う。 「…もしもし、のんちゃん?俺、嵩史。あのさ、今度、ゆきちゃんが海に行くって知ってた?何か、車の運転するって言ってんだけど…」
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