原西と社長

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兄弟それぞれが、大学でた年に一億もらって、好きにしろって言われたんだ。 僕はジムを始めて、兄は、、、、自分自身に投資したんだ。」 理解しがたい要の言葉に、振り子のように透に顔を向ける。 「百万ドルのボディーでっす!」と、目の横で斜めにしたブイサインと、バチンと音がしそうなウィンクをかえされた。 「そうだったんですか、、、」 それ以上、俺に何が返せただろう。 念願だった肉体改造を済ませた透は、夜の街で働くしかなかった同志達が、昼間働ける職場を作ろうと、残った資金をつぎ込んで、このレストランを作ったらしい。 今は、東京にしかないが、全国の政令都市全部に支店をつくって、悩める仲間を救うのよ!と熱く語ってくれた。 第一印象はアレだったが、意外に好感の持てる人物でホッとする。 一生涯そばにいようと決めた相手の身内に苦手意識など、できれば持ちたくない。 最後には透からも気に入られ、「カナちゃんに捨てられたらうちにいらっしゃいよ」と誘われ、怒った要を宥めながら解散した。 兄弟喧嘩なハズなのに、どうみてもキャットファイトなのには参ったが。 「ビックリしたでしょ?」 帰り道。 そう訊ねられて、素直に頷く。 「でも話してみたら、要の兄さんなんだと思いましたよ。」 いいながら、要の肩をだく。 「彼女じゃなくて、良かったです。」 「オカマな家族でも?」 ふざけた様子でかえされて、その唇をキスでふさぐ。 「要の家族でしょう? アンタを構成する全ての要素を愛したいですから。」 本心からの言葉だが、茶化されるだろうと覚悟した。 だが、待っていた返事が返ってこないのでのぞきこむと、真っ赤になった要が下を向いて固まっていた。 「前から思ってたけど、君ってキザだよね」 心当たりのない言葉に首をかしげるが、要がどこか嬉しそうなので、まぁいいかと思う。 こんな風に毎日が過ぎていくといい。 穏やかな、だけども愛しい日々。 今度こそ、完。
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