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朝方から降り続いた雨は雨足をまして、昼だというのに、外は真っ暗だった。
遅い昼食にでかけた原西と新堂は、馴染みのレストランをでた所で。
誰かに呼び止められた新堂が、振り向きざまに抱き締められた。
新堂をその腕に納めた男は大柄で、濃い金髪に翠の瞳をしたイタリア人だった。
「愛しい人。こんな所で逢えるだなんて、やはり僕らの指には赤い糸が繋がっていたね。」
甘い声で呟きながら、新堂の顎に手を置いて流れるようにキスしようとした。
「、、、要?」
後一歩で唇があたるというところで、スイと身をかわし、腕の中からすり抜けた新堂に、訝しげに男が問いかける。
「カルロ。
了承のない相手にキスを迫るなんて、君らしくないね。」
口調と笑顔は柔かだが、明らかに怒りのオーラを漂わせる新堂に、大柄な男が気圧されて一歩ひいた。
「それに。
好きなときに僕に抱きついていいだなんて、馬鹿な勘違いをしたのは何故?」
にこやかな笑顔から紡がれる冷ややかな言葉に、カルロと呼ばれた男が愕然とした表情で新堂を見つめる。
「そんな、、、」
尚も言葉を紡ごうとする男に、冷たい一瞥を与え新堂がクルリと背を向けた。
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