雨に唄えば

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「僕は君に、僕を呼び捨てにする権利を与えない。 抱き締めることは勿論、口づけなんて許可した覚えはないよ?」 そういうと、原西の腕を引いてその場を後にする。 「要!」 尚も後を追おうとした男に、立ち止まった新堂が冷え冷えとした温度を感じさせない声で告げる。 「さようなら、カルロ。 永遠に。」 完全な拒絶を前にして、立ち尽くした男を一瞥すると、今度こそ振り返らずに歩き始めた。 黙々と歩く新堂と、並んで歩く原西が大きな傘で新堂を雨から守る。 寮への最後の曲がり角を曲がった所で、新堂がピタリと歩みを止めた。 「、、、聞かないの?」 降りあおぎ、じっと原西を見つめる。 同じく立ち止まった原西が、新堂の頬に手を添えた。 「話したいですか?」 返された質問に要が首をふると、男くさい笑顔で原西が笑った。 「良かった。 俺は聞きたくないです。 過去の話は構いませんが。 今後、同じように他の男に触れさせたら、俺はアンタを殺すかもしれません。」 真面目な顔で返された答えに、新堂が目を見開いた。 「今日みたいに、いきなりでも?」 面白そうに聞き返した新堂に、苦虫を噛み潰したような表情をして原西がボヤく。 「さっきのも、アンタならかわせたでしょう? 心配しなくても、ベタぼれしてますから。 妬かそうとしなくて、結構です。」 ため息を吐きながら落とされた言葉に、新堂が心底嬉しそうに笑う。 「なんだ。バレてたの。」 その返答に、原西の肩がおちた。 「今日のは、今の顔で赦します。 次はないですからね。」 呆れたように返される返答に、新堂が原西の持つ傘のえをつかんで引っ張る。 「熱烈だね。」 顔を寄せて呟いた新堂に 「本気ですから。」 と原西が真顔でかえす。 傾いた傘が、道からの視界を遮った瞬間。 深く口づけて、舌の下側をなめあげながら唇を離した。
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