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ここ数ヶ月。
感じた事のなかった感覚に戸惑う。
大阪では覚えることがいっぱいで、体も疲れていたから暇など感じることもなく。
こちらに帰ってきてからは、規則正しい生活に加えて、身体が資本の篠田にならって早寝早起きだし。
何よりいつも篠田がいる。
俺、ダメ人間になってないよな?
頭に浮かんだ考えに、ちょっと不安になってきた。
時計を見ると、まだ夜の10時を過ぎたばかりだ。
久しぶりに本でも読もうと立ち上がり、コンビニに向かった。
そういえば、こちらに来てからペアリングを着けていない。
篠田と同居していることは会社の人も知っているので、それで揃いのリングをつける勇気は今のところ湊にはない。
だが。
家に置かれたリングの片割れを、寂しげに篠田がみていたのも知っている。
ファッションリングなら、友達同士でデザイン違いをつけていても、怪しくないだろうか?
ふと思い付いて、顔を綻ばす。
そうだ。
コンビニについたら、雑誌も買って帰ろう。
ホクホクと微笑んだその時。
歩道に乗り上げてきたバイクに、勢いよくはねられた。
まずい!
そう思った時には既に遅く。
飛ばされながら、受け身をとるのが精一杯で。
地面に叩きつけられる衝撃を感じて、俺はそのまま意識を手放した。
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