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パチリと目を開くと、真っ白な天井が見えた。
どこだかわからず起き上がろうとするが、身体が痛くて動けない。
そうだ。
俺、バイクに跳ねられたんだっけ、、、と、思ったところでガチャリとあいたドアを見ると、母さんが立っていた。
なんだか、急に老けた気がする。
そんなに心配をかけたのだろうか。
身動きとれず、自分の身体が確認できずに不安になる。
まさか、バスケが出来なくなるなんてことは、、、ないよな?
不安な気持ちで見返すと、母さんがいきなり大声をだした。
「湊!良かった!起きたのね。
今日、起きなかったら大学病院に搬送するところだったのよ!」
ギュッと抱き締められて、痛みに悲鳴をあげた。
その悲鳴に駆けつけた看護師さんから、全身打撲で意識不明だったのよと説明される。
奇跡的に骨折もなく、CT にも異常はなかったが三日も目覚めず。
今日、目が覚めなかったら、精密検査のために転院予定だったのよと微笑まれた。
身体が痛くて動かないというと、ちょうど今が一番痛い時期なのよねと、コロコロと笑われる。
酷い怪我はないようで、ホッとした。
それから、夕方まで色んな検査をしたけど、特に異常もみつからず。
打撲の痛みが収まれば、家に帰れると言われて安心した。
「そしたら、しばらくは家に帰ってくる?」
母さんにそう尋ねられて、首をかしげる。
他に帰る家があるかのような口ぶりに、訝しげに見返すと、
「あら、やっぱり篠田くんのお家がいいの?
いくら会社に近くても、こんな時くらい帰ってきたら?」
そう苦笑いされて、ビックリする。
会社って、なんだ。
「会社?」
問いかける俺の表情を見て、異変に気づいた母さんが顔色を変えた。
それからは、また、検査室に逆戻りだ。
きっかり三年分。
それが俺の失った記憶だった。
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