1809人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
ガチャリと大きな音を立ててドアを開け、消灯を告げに現れた看護師が、俺の涙をみて、アラアラと驚きながら側にきた。
頭を打って混乱されると涙もろくなるものなのよと微笑まれる。
そうかもしれない。
友人が離れていく。ただそれだけの事にこんなに胸が痛むのは、記憶を失って動揺しているから。
だって、篠田が誰かと一緒に幸せになることを一番望んでいたのは俺自身だ。
その夢が叶ったのに、こんなに悲しい気持ちになるなんて間違ってる。
考えれば考えるほど、熱くなる目頭に戸惑いながら眠りについた。
看護師に背中を押されながら、明日また来るからとどこか必死な顔で言った篠田の顔が夢に出てきた。
離したくない。
世界で一番側にいて。
誰よりも幸せにしてやりたいのに。
自分ではない誰かが、篠田にそれをあたえるのか。
そう思った瞬間。
夢の中でまた泣いた。
最初のコメントを投稿しよう!