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篠田がはめているより、若干真新しさを感じさせる揃いの指輪。
本当に?
じわじわと嬉しさと共に頬が赤くなる。
諦めなくても、良いのだろうか?
嬉しさに頬が緩む。
その勢いで、部屋をでてリビングに戻った。
コッソリとのぞいた広い部屋で、大きなソファのはしっこで篠田が肩を落として座っていた。
あまりにもションボリとした悲しげな風情に驚く。
静かにドアを開けてリビングに入ると、弾かれたように篠田が立ち上がり振り返った。
けれど、そのまま動きを止めて、近づくべきかどうか迷ったようすの篠田に、俺から近づいてみる。
思いきって、すぐ近くまで近寄って見上げると、戸惑いながらも柔らかく腰の後ろで手を結ばれた。
その手に引かれて、身体が密着する。
伝わってくる体温に、ひどく安心した。
自分の場所に帰ってきた気がする。
胸に頭を預けると、聞き覚えのある篠田の心音と、体内をふるえて伝わる低い声が聞こえた。
「おばさんに、記憶がなくなってるって聞いた。」
その言葉に、腕の中で小さく頷く。
「嫌じゃないのか?」
降ってくる言葉と共に、抱き寄せる腕にグッと力がはいる。
嫌だといったら緩める気なのか、それとも強く抱き締めて、逃げだせないように捕らえる気か。
どちらかかを考えて、自分の望む答えは永遠に選ばれないと笑って、篠田の背に手を回した。
「覚えていないけど、嫌じゃない。」
そう腕の中で呟くと、力いっぱい抱き締められて、三度目の悲鳴をあげた。
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