スタンド バイ ミー

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それからの一ヶ月はあっという間だった。 馴れない仕事に、想い人との甘い生活。 恋人になった篠田は、友達としての篠田とは全然違った。 ただ俺を甘やかすだけではなく、宝物の様に扱い、なにくれとなく世話を焼く。 此方があきれるほどの溺愛ぶりに、嬉しいが何処か危うい印象を受けた。 何処とはいえないが、何かがおかしい。 その想いは日増しに強くなり、2ヶ月が過ぎる頃には俺の中で確信にかわった。 だが、それがなにかが分からない。 昔の自分なら、それが何なのか分かるのだろうか? それとも、そんな状況に篠田を追いつめること自体しないのか。 無くしてしまった記憶は、仕方ないと諦めていたが、今は思い出したい。 日に日に魂を削るように、弱っていく篠田を助けたい。 その日、ジムの扉を閉めて振り替えると篠田がいた。 こうして時々、篠田は俺の帰りを待っている。 近くまで来たからとコンビニの袋を見せながら小さく笑う、どこか儚い笑顔に不安になる。 「家で待ってて、良かったのに。明日も早いんだろ?」 駆け寄りながら、その様子が心配でのぞきこむ。 けれど、俺の顔を見るとホッとするからとだけ告げて家路へと向かう篠田に異変はなく。 訝しげに思うが、それ以上なにも言えず。広い背中を追いかけた。 家に帰りつき、扉を閉めた途端に篠田に抱き寄せられる。 篠田が先に帰った日には、いつもこうだ。 勿論、俺が先に帰りついている日にもキスとハグはされるが。 今日のような何処か必死さを滲ませたようなキスはしてはこない。 口づけをかわしながら、篠田の背中を宥めるようになでる。 ふと、篠田の熱があがった。 たまに、こうして抱きあっていると篠田の身体が熱く、欲望の色をまとうことがある。 そのままベッドに雪崩れ込むこともあったが、その時でさえ篠田は優しく、俺を逝かせることだけに集中しているかのようだった。
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