スタンド バイ ミー

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篠田が俺を混ぜて溶かす度に、沈んでいた記憶達が、愛しい男の影を強くする。 一人で待てない癖に。 やせ我慢して家で待っていたであろう篠田や。 俺からの定時連絡が入らずに、職場で肩を落としている篠田が簡単に思い浮かぶ。 寂しがりな癖にカッコつけで。 訳のわからない理由で自分を追い詰める不器用な男。 そんな篠田が、俺は好きだ。 好きすぎて、自分自身に嫉妬した。 記憶をなくした俺の瞳の中に、過去の俺を見つけだそうとした篠田に無意識で冷たく当たったほどに。 篠田の頭を抱え込んで、律動を刻まれながら口づけを落とす。 顔をあげた篠田に、「ただいま。」と告げると、一瞬呆けて、目を見開いた。 瞬間。 奥で弾けた篠田を、不思議に思って見下ろした。 「、、、気が抜けて、逝っちまった。」 物凄く不本意そうに、本気で肩を落とす男に、悪いとは思ったが爆笑する。 肩を震わして笑う俺を、恨めしげに見た後、抱き締められた。 「本当に?」 多少の疑いを交えて、のぞきこんできた眼差しを受けとめてキスを落とす。 その後に、軽く額を小突いて、頬を引っ張った。 「俺が忘れてたら、何度でもいえよ。 頼むから、一人で待つな。」 本気で願いを込めて見つめた俺に、嬉しそうに篠田が頷く。 今。俺は、怒っているんだが。 俺にブリーダーの才能は全くないよなと、心中で呟いていると、篠田がすりよってきた。 目線をやると、 「おかえりなさい。」 嬉しげに微笑んだ。 「待たせてゴメン。」 キスをくり返し、抱き締めあって。 祝杯をあげた。 もう二度と、離れない。 例え、世界が終わっても。 darling。
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