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それは、嬉しくもあるが、時にとてつもなく俺を怯えさせる。
もし、篠田が俺に幻想を抱いていたら?
ある日。なにかのキッカケで本当の俺に気がついて、離れていったら?
今は当たり前のように隣にいる篠田が、俺の側を離れたら。
その時。俺は正気でいられるだろうか?
ふとした瞬間に襲ってくるそんな考えに、たまに不安になる。
篠田と付き合いだして、俺は弱くなったと思う。
まだ影もない暗い未来を想像して怯えるなんて、昔の俺からはあり得ない。
寝転んだ俺の顔に、篠田の陰が落ちた。
俺をのぞきこんだ瞳が、不安に揺れている。そっと手を伸ばして、抱き寄せて背中を数度叩いた。
不安になるのは、自分に自信がないからだ。
実業団に入り。レギュラーになって、確実に実績をつんでいる篠田と。
一介のサラリーマンである自分。
日毎に開かれていく気がする男としての実績。
篠田の隣に並ぶ男として、いつでも恥ずかしくない生き方をしたいと願っているのに。
スポーツ雑誌にインタビューが載ったり、ファンクラブができたと聞けば不安になる。
女々しいのは、俺のほうだ。
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