crazy for you

6/17

1809人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
それは、嬉しくもあるが、時にとてつもなく俺を怯えさせる。 もし、篠田が俺に幻想を抱いていたら? ある日。なにかのキッカケで本当の俺に気がついて、離れていったら? 今は当たり前のように隣にいる篠田が、俺の側を離れたら。 その時。俺は正気でいられるだろうか? ふとした瞬間に襲ってくるそんな考えに、たまに不安になる。 篠田と付き合いだして、俺は弱くなったと思う。 まだ影もない暗い未来を想像して怯えるなんて、昔の俺からはあり得ない。 寝転んだ俺の顔に、篠田の陰が落ちた。 俺をのぞきこんだ瞳が、不安に揺れている。そっと手を伸ばして、抱き寄せて背中を数度叩いた。 不安になるのは、自分に自信がないからだ。 実業団に入り。レギュラーになって、確実に実績をつんでいる篠田と。 一介のサラリーマンである自分。 日毎に開かれていく気がする男としての実績。 篠田の隣に並ぶ男として、いつでも恥ずかしくない生き方をしたいと願っているのに。 スポーツ雑誌にインタビューが載ったり、ファンクラブができたと聞けば不安になる。 女々しいのは、俺のほうだ。
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1809人が本棚に入れています
本棚に追加