1809人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
冷たいタオルを額に充てられて、閉じていた目を開けた。
いつの間にか宿の浴衣を着せられて、冷たい畳の上に寝かせられている。
腹の上に置かれた大きなバスタオルに、本当マメだよなと、クスリと笑う。
目を覚ました俺に気がついた篠田は、冷蔵庫からペットボトルを取り出して、横になったままの俺に手渡した。
この甲斐甲斐しさには、何時までたっても馴れない。
普段は、面倒くさがりで。
亭主関白なイメージの強い篠田の意外な一面だ。
カップスいちの俺様キャラと名高い篠田のこんな姿を見たら、チームメイトは腰を抜かしかねない。
一人ニヤツク俺を見て、篠田も不思議そうだがどこか嬉しげだ。
近寄ってきて、俺の隣に座ると。
今度こそニコニコと満面の笑みで俺の頭を撫でた。
「機嫌がいいな。」
何度も頭を撫でながら呟かれた言葉に、頷くと眩しそうに目を細められた。
小さく、そうか。と満足そうに呟かれて俺まで嬉しくなる。
旅行はまだ始まったばかりだ。
これからを思って微笑むと、柔らかな口づけが落ちてきて、落ち葉のようだと頬が緩む。
どうか。この時がずっと続きますように。
心の底から祈りを捧げて、篠田の襟を引き寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!