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俺は一度、死んでいる。
警察から呼び出された冷たい霊安室で、横たわる両親の遺体を前に立ち尽くしたあの時に。
もの言わぬ二人の手を取って、俺が迎えを頼んだばかりに冷たい躯になりはてた両親に、ただ謝罪した。
どんな罰を受けても、償いきれない十字架が確かにあの時、刻まれた。
それから引き取られた叔父には、今思えばかなり辛い思いをさせた。
魂を凍らせて。バスケを封じることで、自分を罰し続ける俺を支え続けてくれた。
けれど。当時の俺には、その優しさが耐えられず。
叔父の結婚を期に、頼みこんで一人暮らしをさせて貰った。
あの時、両親の後を追わなかったのは叔父が居たからだ。
その後、湊に出逢って世界は色を取り戻した。
砂を噛むようだった食事を、旨いと思い。
両親を死なせた俺が。また一日生き延びることを悔いて、明日が来るのを怯えることのない夜を過ごせた。
もともと、余りなにかを欲しがる子供ではなかったが、あの事故以来それは加速度をまして。
バスケと湊以外に、俺が生きる理由は何もなかった。
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